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第14話

「風海さん、今日は少し散歩してみませんか」 寝たきりから、下半身を起き上がらせて座ることができるようになった数日。 まだ自分の体の重さに慣れない。体重も筋力も驚くほど減っていたし、流動食も味が無くて不味いし飲み込むのが辛い作業だったのに。 「車椅子ですけど、そこ、手すりもあるし地面が柔らかいんですよ」 「へえ」 「ゴムチップウレタン舗装って言って、リハビリテーション室の床にも取り入れてほしいってお願いしてるんですよ」 「へえ」 征孜くんは、僕が社会復帰するまでのリハビリを全部担当してくれるらしい。 一条病院の跡取りかと思っていたけど下に9歳の弟がいるから大丈夫だよって笑っていた。 「あら、もうお散歩ですか」  看護師さんが僕の方へ駆け寄ってきてくれた。  差尻 美鈴さん。僕の部屋の担当をしてくれていた、垂れ目で下唇がぶ厚くて、目元の黒子がセクシーな女性。  駆け寄ってくる彼女の様子は、可愛らしい小動物のようだった。 「はい。風海さん、数値も安定してますし、後遺症もほとんど見当たらないので」

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