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第16話

「えっと、見てないからね?」  仕事とはいえ、信頼関係を築こうと努力してくれている征孜くんの前では言動を気を付けなきゃいけない。 「はい。だから、俺もすいませんでした」  それによく観察してるなら、俺と遼のことも気づかれちゃうかもしれないし。 「それにしても、征孜くんはそんな……金髪で、仕事場で怒られないの?」  茶色に明るく……ぐらいなら許してる職場は多いと思うけど、征孜くんは外国人も真っ青の金髪だと思う。 「あ、これ異例中の異例です。特別に許可貰ったんです。風海さんが目覚めた日に金髪に染めたんですよー」 「ええ、なんで?」 エレベーターに乗り込み、一階のフロアに降りつつ、後ろから車椅子を押してくれている征孜くんに尋ねる。  でも彼は悪びれもせず、悪戯っ子のように笑っていた。 「ふふのふー。内緒です。これもリハビリの一部なんで」 「金髪が?」 「そうです。心の、ね」 肘置きに乗せていた腕に、優しく触れられた。 見上げた征孜くんは、幼さを残した笑顔で、ただ信頼関係を築くための触れ合いのようだった。

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