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第17話
だけど、同性が恋愛対象の僕は不覚にもときめいてしまったから、少し悲しい。
「到着しましたよ。ここ、中庭で、もう少し向こうに行くと父の趣味で温室まであるんです」
冷静に装いつつ、芝生に木々の影が落ち、静かで涼しい円型の天然のドームの下を車椅子で通る。
花の青臭い香りがして、花壇が植えている。
それぞれの病棟の中心にある中庭は四つの通路がぶつかった中央が芝生広場で、それまでの通路が木々のドーム。
芝生広場の向こうに、先ほど話していた柔らかい地面の、手すりが付いた通路があって何人かご老人が歩いてリハビリをしていた。
一条総合病院は、大きく分けて小児科、外科、内科、形成外科でその中でまた細かく分かれている。確か海沿いにあるせいか潮の香りがここまで漂ってくるんだよね。
もう少し先の丘の上に、産婦人科も離れてある。でも間違いなく、この市で一番古く、そして一番大きな病院だ。
「聞いてます、風海さん」
「え、あ、あ、いえ」
「聞いててくださいよ」
クスクス笑われ、恥ずかしくて頬が熱い。
いつの間にか、手すりのある通路まで到着していたようだ。
「ゆっくり捕まって、立ってみましょうか」
「え、いきなり?」
まだベットから車椅子まで自力で歩くのも困難なのに?
生まれたての小鹿みたいに足が震えて、今日は征孜くんに支えてもらっていたじゃないか。
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