19 / 138

第19話

「わっ」 支離滅裂だと自分でもわかっているが、五年間の間に体重は10キロ減少していた。 湶が浮いていて貧弱な体つきになっていた。 なのに一人で立ち上がるには、自分の体がとても重く感じるんだ。 征孜君の手が離れて、代わりに手すりにしがみつく。 手すりを握る握力さえもまだ弱かったけれど、僕は自分の足で地面の上に立っていた。 「……わあ」 「ね。おめでとうございます。風海さんはまだ若いから、回復が早いんですよ」 「若いって、君の方が若いのに」 クスクス笑うと、征孜くんの顔がとろけるように綻んだ。 わあ、格好いい人が笑うと、とてつもなく可愛く感じる。 「この柔らかい素材の地面はどうですか」 「ほんと、柔らかいね。でも、なんだかまだふらつくから、ちょっと怖いかもしれない」 「あー……そっか。そうですよね。固いのは転倒したときに怖いけど、でも普通の時は固い方がいいのか。なるほど」 熱心に僕の意見に耳を傾け、尚且つメモ帳まで取り出している。 「征孜くんって丁寧だね」 「俺の活動報告書見ます? 『〇月×日晴れ、風海さんの寝顔、今日も麗しい』とかしか書いてねえっすよ」 「あはは、絶対嘘だ」 でも絶対、僕のことは書いていると思う。 見たいような見たくないような、不思議な気持ちだ。 「風海っ」 笑っていたら、中庭の入り口からコートを翻して向かってくる遼を見つけた。

ともだちにシェアしよう!