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第22話
辛そうな、泣きそうな顔。
不意に零れ落ちそうになる涙が、僕の目の中で溜まって、彼の顔がにじんでいく。
「……僕が許してるのに、なんで関係ない君が遼を責めるんだ」
「貴方は何も知らないから」
「離して」
噛みついたのに、僕の口を離さなかった。
「俺は絶対に許さない! 世界中があいつを許す日が来ても、俺は絶対に、許さない!」
「征孜、何をしてるんだ」
院長と副院長、そして看護師にリハビリテーション科の主任まで、廊下から走ってこちらに来る。
普段、子どもたちに走るなと厳しく言っている人たちが、懸命に走ってくるのは少し滑稽だった。
院長に頬を叩かれ、壁に押し付けられた征孜くんの手は赤く歯型が浮かんでいたが切れてはいなかった。
力が弱かったからか、人の手の皮は厚いからか分からないが、僕は噛みちぎってやりたかった。
世界中に許されないのは、きっと僕の方だ。
自分とは対比の、柔らかい体を持つ女性に興味がもてず、同じ身体である男性にしか興奮しない。
そんな僕を、受け止めてくれたのは、ただ一人。
僕には遼だけだった。
「ごめんなさいね。征孜と話をするから。貴方は病室へ」
ぞろぞろと肩書のある大人たちが遠ざかっていく。
看護師の差尻さんが、僕の車椅子を押した。
「あのね、征孜くんは君に乱暴なことをしたかったわけじゃなくてね、君を傷つけたいわけでもなくてね」
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