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第24話

「僕が……?」 事故の記憶は確かに曖昧だ。 遼との話では、違いがあるらしいと言われた。 でもはっきりと説明されたわけじゃない。 親も院長も征孜くんも、聞こうとしないしそれ以上詳しい説明はなかった。 「君が、もしも何か傷を守りたくて、刃物みたいに危ない思い出を自分から遠ざけているのなら、大正解なんだよ。生きてる以上に大切な思い出はない」 「思い出さなくても、いいってことですか」 「うーん。思い出して、辛くなるより前を向いて生きよ!ってことなのかな。征孜くんはね、そんな苦しくて辛い体験をさせて過去を切り落とさなくちゃいけない状況を作った遼くんが許せないみたいだけど」 そればかりは、難しいよね、と立ち上がった差尻さんは開いていた窓を閉めると、カーテンで空を隠した。 夕焼け色に染まりつつあった空は、にごったクリーム色のカーテンに覆われていく。 「あの事故の時、発見したのも二人が険悪に言い争いをしてるのを聞いたのも、征孜くんなんだよね。って、もうすぐ夕食の時間だったね」 おっといけないいけない、と差尻さんは時計を見た。 そして急いで僕の検診を終わらせると、気まずげに笑う。 「話しすぎちゃったけど、これ誰にも言わないでね。遼くんも辛いし、征孜くんも辛いし、でも、それは二人が乗り越えなきゃいけないことで、貴方は気にしないでね」 「……でも僕のせいじゃ」 「ぜーんぜん。貴方が悪い要素はないわ。あ、あるとするなら、優しすぎるってことかな」 「――美鈴」  低い声が廊下から突き刺さった。 差尻さんは、舌を出しながら廊下の方を振り返った。 「どうしたの? 征孜くんは?」 「俺が会ったら、余計に暴れるだろ。……今、いいか?」

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