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第25話
廊下で二人で会話をしていたのに小声になっていく。
僕に何かを話さないといけないのに、遼は言いたくて、差尻さんが止めている様子だった。
「いいですよ。廊下で僕抜きで話された方が、気になっちゃいます」
「……風海さん」
「もうここまで騒ぎになっちゃったし、秘密にされてる方が僕は気持ち悪いかな」
何を言いたいのだろうか分からない。
あの、優しそうな征孜くんが怒るとことって一体何なんだろうか。
「風海」
革靴の音が、病室の床に大きく響いた。
その時の二人は、とても対照的だった。
真っ赤になってきょろきょろと視線を泳がせる差尻さんと、辛そうな顔を押し殺して無表情な遼。
でも遼の手が、優しく差尻さんの肩に乗っているのを見てすべてを理解した。
「来月、結婚するんだ。美鈴と」
「……らい、げつ」
「あのね、遼くん、本当に毎日毎日、あなたのお見舞いに来てて、倒れそうなほどやつれててね、放っておけなかったの。だから、彼も事故のこと、ほんとうに反省してるのよ」
あ……嗚呼、そうか。
今頃になって遼の指に指輪が光っているのに気付いた。
宝石はついていない、シンプルは細い銀色の指輪。
僕が起きなかった五年間、周りから散々非難されて、遼が悪かったにしろ、きっと遼だって辛かった。
そんな遼を唯一、彼女だけがわかってくれていたんだ。
「差尻、さん」
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