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第26話

嬉しくて涙が浮かんだ。 「遼、きっと僕のことで沢山、色んな人に……それこそ征孜くんみたいに非難する人がいただろうに、分かってくれてありがとう」 嬉しくて涙が浮かんだけど、言葉にすると悲しくて涙がこぼれた。 悲しい。悔しい。 そしてとても苦しかった。 ただ――……。 僕は遼だけだから、遼が五年起きなくても、気持ちは変わらなかっただろうなって思ったら、僕と遼の気持ちの温度差に気づいてしまったんだ。 でも悪いのは、彼ではない。 意識のない僕は、触れないししゃべらないし、彼を満たしてあげられないしね。 「風海」 「来月か。僕、歩けたら、式に参加できるかな」 嬉しくて浮かんだ涙は、色んな感情の重さに耐えきれずに流れ落ちていった。 泣いたら怪しまれるから、必死でその感情がばれないように、笑った。 笑ったけど、ぐちゃぐちゃだった。 感情と心と頭と表情がバラバラに叫んでいるようだった。

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