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第27話

「式に参加してくれるのか」 震える遼の声。僕は、全ての感情を涙の中に流しながら泣いた。 ふらふらとベットに近寄ると、遼は僕のベットに顔を埋めた。 「俺のことを、一生許してくれなくていい。一生、許してくれるな」 「遼……」 「今、お前の手で、殺されてもいいと思った」 顔をあげない遼に、僕は首を振る。 「幸せにすると誓った相手の前で、君は不誠実だ」 「……そうだな。俺は最低だ」 差尻さんが遼を見たあと、僕に目配せした。 「私、他の方の検温があるから」 親友二人のために空気を読んで出て行ってくれた差尻さんに、今はただただ空気を読んでほしくなかったな。 遼と二人になるのは、あまりに辛い。 「風海」 「僕ね、気づいていたんだよ」 顔をあげようとした遼の頭を、抑えてしまった。 弱弱しい押え方だったのに、遼は顔をあげなかった。 「大学に入って、遼の部屋に女性の香水の匂いとか、あと偶に朝帰りとか、分かってたんだ。遼は僕と違って同性愛者じゃないって。ただ一人でいる僕の面倒を見てくれていただけなんだって」 「ちが、それは違う、風海」 頭を撫でていた手を掴まれ、顔をあげた。 苦しそうな顔は、反則だ。君がしていい表情ではないだろ。 僕は、君が僕以外の女性を抱いていたのを知っていたし、柔らかい女性の体の方に惹かれて言っている君が知っていた。 だから、離れないように、君が望めばエッチは絶対に拒まなかった。 僕は、知っていて必死に君にしがみついていた。 僕がしがみつくのを辞めれば、君が女性を選ぶのを知っていたよ。 必死な僕を君が見捨てられないだろってね。

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