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第28話
「俺は、これからもずっとお前だけが好きだ、風海」
「最低なことを言うな!」
手を振り払いたかったのに、全然力の強さがちがう。抗えない。
あんなに素敵な女性が五年も支えてきてくれたのに、――僕が好き?
「見損なった。君なんて、人を好きになる資格はない。二度と僕の前に現れないでくれ」
「風海、でも俺は本当に」
「君は、彼女の五年間を否定するのか!」
君を支えてくれていたのは、彼女だろ。
僕がこの先も目覚めなかったら、遼は何も問題なく差尻さんと結婚していたんだろう。
それだけでも辛いし苦しいのに、それ以上僕に何も言わないでくれ。
「僕たちは、五年前に終わった。君の中ではそう処理していたからこそ、彼女と歩き出したんだろう。同情も嘘も、哀れみも何もいらない。僕は、君からもう何もいらない」
「風海」
「ほかの人を好きな君から、もう何ももらえないよ」
震える声は、きっと弱弱しかっただろう。
僕だって自分がとても情けなかった。
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