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第30話

嗚呼――……。 僕のリハビリは、一年以上かかるかもしれないと院長に通告されていた。 社会に出るのは、28歳? 新卒扱いではないよね。そして僕より若い子たちと一緒に働いても、身体にハンディが残っていたら足手まとい。 でもこの六年、親にも病院にも迷惑をかけている。 僕が社会に出ないと、恩返しできない。 就職先だって探して……。 仕事、これからのこと、リハビリ、そして一生できないだろう結婚。 嗚呼--……。 僕はどうして目を覚ましてしまったんだろう。 眠れない夜、カーテンの向こうの真っ暗な空と海を見て、絶望した。 朝なんて来なければいいのに。 夜なんて明けなければいいのに。 この先、生きていく先に何も希望が見いだせないんだ。 どうしてあのまま海に消えてしまわなかったんだろう。 誰一人、僕が目が覚めることに心から喜べる人なんていないじゃないか。 「……馬鹿みたいだ」 何度も転がりながら、僕は車椅子に乗ると、こっそり抜け出した。

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