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第36話

真っ暗な夜、音は大きく響くらしい。 僕は、その暗闇で大きな音を聞いてしまった。 征孜くんの言葉が暗闇で僕を照らした。 嬉しかった。誰にも必要とされない僕を、必死で抱きしめてくれた。 泣いてくれた。 僕を、離さないって言ってくれた。 遼が好きな僕を、否定しないで怒ってくれた。 だから。 だから、僕は君を選ばないよ。 恋愛はもうやめる。こんなに心も体も傷ついてしまうなら、僕はもう恋愛なんてしない。 したくない。 君を心の拠り所にしてしまったら、遼の二の舞いだろ。 僕は、もう誰も好きにならないよ。 でも君みたいに優しい人も、この世界にはいる。 「……風海さん、院長が来ちゃったっすね。言い訳、考えてませんよね?」 「うん」 「じゃあ俺が何とか言い訳考えるんで、それに合わせてください」 「うん」 「明日からも、貴方の作業療法士でいてもいいですか?」 申し訳なさそうに征孜くんが言う。 けれど、さっきまでの強引な君はどうしたんだ。矛盾してるじゃないか。 「僕、こんな風にすぐ迷惑かけちゃうから嫌にならないかな」

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