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第41話
「征孜くんって、太陽みたいな人ですね」
征孜くんがリハビリテーション科に戻ったので、差尻さんに言う。
昨日のこともあり、僕が脱走しないようにの処置だと思う。
差尻さんは昨日から食欲がないからと説明してきたが、いきなり点滴なんて、どう考えても深読みしかない。
でも点滴の準備をしている差尻さんに、つい素直な言葉をこぼしてしまった。
「太陽? 金髪だから?」
「いえ。なんか、征孜くんが来たら、ぱあっと朝になるんです。どのくらい徳を積めば、彼みたいに心が綺麗な人になれるんでしょうね」
「徳?」
ぷっと噴出した差尻さんが、針を刺した腕を固定し出した。
これで両手が不便になった。ご飯の前には抜いてくれるのかな。
「征孜くんは確かに動って感じよね。遼は、穏やかな海って言うか静だし。でもねえ」
クスクス笑いながら、補強テープを貼り終わって手で、口を隠す。
「あの子、小学校の時に単車盗んで学校の運動場で走って警察沙汰になったり、遅刻するからって中学の廊下を自転車で駆け抜けたり、大変だったのよ」
「征孜くんが?」
「そう。院長が再婚したときに荒れちゃって。素敵なお父様だったんでしょうね」
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