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第43話

ギプスが取れるのは一か月後と言われた。 遼の結婚式は一か月後。 でも一人で歩くのもまだふらふらで、身体に上手く力が入らない状態で、彼の結婚式に行くのは不可能だろう。 言い訳ができてしまった。 そもそも行くはずない。 「う。やばい。考えないって自分で決めたくせに考えたせいで、吐きそう」 でも仕方ないのかもしれない。 五年前、僕の思考のすべてが遼とのことだったのだから。 座って英単語長を読む。和英辞書も読んだ。 そして好きなミステリー小説を、英字で書かれた本と和訳された本を左右に並べて、どう翻訳されたのか眺める。 色んな人の翻訳が読めるのは、人気ミステリーの良いところだ。 「あ。それ、最後、犯人と探偵が滝に落ちて探偵だけが助かるやつだ」 「征孜くん……言い方が風情がないというかなんというか ちらりと時計を見るともうすぐ点滴が取れる時間だ。 「昨日の夜も、朝ご飯も食べないから点滴なんて付けられるんですよ。お風呂なんですが、俺で良ければ髪だけ洗いますよ」 「ん、明日お願いするかもしれない。今日はいいよ」 「じゃあ、点滴外れたら俺と散歩します?」

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