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第44話
昨日の今日で、まだ病院内を散歩して大丈夫なのかな。
「うーん。僕はそれより、この簡易ベットをどうするのか知りたい」
「今、ベットは足りてるのでここに置いててください」
「いや、ここ、個室だから、その……君、ここで寝るつもりかなとか」
征孜くんは笑顔で固まったまま『そうだ、リンゴ食べます?』と僕の冷蔵庫に勝手にいれていたらしい林檎を取り出した。
「……僕、まだ流動食しか食べられないんだけど」
「じゃあすり下ろします」
「そこまでしなくていいよ。本を読みたいから今日は特にいいよ」
「へへ。勉強熱心な風海さん良いですね」
なぜか椅子に座って、征孜くんもミステリー小説を読みだした。
「君、仕事は?」
「うん。今日は貴方の隣にいるのが仕事」
「……そう」
また適当なことを言ってる。彼はどうして、まあそんな風に、惑わすような言葉を言ってくるのかな。
「風海さんが本を、伏し目がちに読む姿が、ちょっと艶っぽいって言うか絵に飾りたいぐらい綺麗だったから俺も今日は読書です」
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