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第46話

Side:一条 征孜 忘れられない日が、二回ある。 一度目は、俺の命を助けてくれた人魚のようにたおやかな風海さんを見た日。 二度目は、あいつが泣いている風海さんに気付いているくせに、それを見て安堵している卑怯者だと知った日。 二度目の光景は、偶にフラッシュバックしてしまう。 必死であいつの背中にしがみついていた風海さんだったが、あいつは急にふらふら運転しだして、そして風海さんを海に突き飛ばし、自分は岩にぶつかった。 そうだ。あれは事故なんかじゃない。 事故じゃない。 俺は、あいつに言った。 『全部、見てましたよ。言い争いした後、不慮の事故が起こるまで、見てましたよ』 いつも堂々としていてどっしり構えている遼兄ちゃんから、さあっと血の気が引くのが分かった。 『事故で済ますの? もう少しで人殺しだったくせに』 胸倉をつかんだが、あいつは顔を背けて抵抗しなかった。 『誰にも言わないでくれ、あいつのためにも、言わないでほしい』 『……あいつのため? 今、集中治療室で生死の境をさ迷っている風海さんのため? ふざけるなよ!』 思いっきり殴り飛ばすと、廊下の向こうから差尻さんが走ってくるのが見えた。 『何をやってるのっ』

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