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第47話
『止めないで。俺は、もし――もし風海さんに何かあったらこいつを許せない』
『大丈夫よ。落ち着いて。貴方の発見が早かったから助かるわ。あなたのおかげよ』
『--っ』
風海さんに思われているくせに。
彼に触れても許されるのに。
だから傷つけていいわけでもないのに。
事故で頭部外傷による死亡率は60パーセントだ。
そして頭蓋骨の外相になれば、線状骨折ならまだいい。でも風海さんは陥没骨折かもしれないと、言っていたのが聞こえた。
一度海に投げ出されているなら、海面で水の抵抗にあっているはずだ。
突き出た岩礁に頭を打ち付けたのかまでははっきり俺も見ていなかった。
風海さんの手術は、夕方から始まって終わったのは九時間後。
集中治療室の表示ランプが消えて中から出てきた風海さんは、廊下から見える朝日に照らされて、穏やかに見えた。
凪いている海のように、静かに、でも確かに生きていた。
俺は声を殺して泣いた。朝の病院で泣き声はきっとどこまでも響いてしまうだろうから。
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