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第55話
中学から付き合って大学までだから六年近く風海さんに思われていた人だ。
そして、事故で目が覚めない風海さんに触れる人。
一番、あの人のそばにいれる人。
もう十年以上、風海さんの気持ちのすべてを奪っていた人。
はっきり言って醜い嫉妬は散々してきた。
風海さんが俺をお日様の匂いとか太陽みたいとか、そんな言葉で表すから言えない。
俺はあの人だけは駄目だ。嫉妬と憎悪でどうにかしてしまいそうだ。
こんなにも真っすぐに思われているのに、女と浮気できる。そして目覚めない風海さんのことを置いて、幸せになろうとした人。
許せない。
「そういえば、君は兄弟がいるんだっけ?」
「います。今、九歳なんですが、生意気にも、生意気じゃないんです!」
「……んん?」
「俺が9歳の時とか、海でサーファーとかにサーフィン習って家に帰らないで友達の家に点々としていたのに、弟は全然。成績もいいし性格もいいし、真っすぐで、ほんと幸せに育って、生意気にも生意気じゃねえんです」
「意味が分からないけど、君が弟が好きってことはわかったよ」
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