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第62話
風海さんの返事を聞く前に、外出許可が下りた。
色々と提出しないといけない書類とか事前の連絡とかすっとばして、許可が下りたのはきっと差尻さんのおかげだろう。
「風海さん、許可が」
「君は、しゃべらなければ……って思ってたけど訂正するよ。しゃべっても格好いいね」
「ええええ。あ、怒ってないんですか?」
「怒ってるけど、君の性格には感心してる。人を奮い立たせてくれるような優しい言葉だ」
ロビーを抜け、晴れているとは言い難い空の下、彼が笑っている。
「でも、僕は君のことは好きにならないってことだけは忘れないでほしいんだ」
「え、なんで」
今、俺に絆されてくれていたんじゃないの。
ちょっと心を開いてくれていたんじゃないのかな。
「君は優しいから。それだけだよ」
ええ。優しいなら好きになってよ。
あいつより優しいしあいつより貴方が好きですよ。
「優しい人は嫌いなんだ」
誰よりも優しそうな人から、そう宣言された日。
空は雨を落としそうなほど深く、海はエメラルドグリーン。
そして俺と彼の間には海と空以上に距離ができていたんだ。
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