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第65話
浜辺から声がして、そのままドアを開けて入ってきたのは、白い顎鬚に背中に大きく『love&peace』とハートマークと骸骨のタトゥーをいれたオジさん。
そしてタオルで顔を拭いている遼だった。
「風海……」
「お、お前の元恋人くんじゃねえか。どうした? お前ら別れたんだろ」
おじさんは僕の顔を不思議そうに見ていたが、遼は店の奥に急いで走って消えていく。
「……あの、上に征孜くんが行ってて、僕は付き添いです」
「征孜も来てるのか? あいつと遼、仲悪いだろ。店壊すほど喧嘩すんなって言わなあかんわ。おーい、征孜」
「え、いや、ちょっと」
遼が本当に海にいるとは思ってもいなくて焦っていた。
どんな顔をしていいのか分からないのに、征孜くんまで連れてこないで。
ああ。自分が行きたいとは言ったけど、こうなるとは。
「おい、これ着てろ」
ふわりと濃い潮の香りが全身を覆った。
ファー付きのフードで目を覆われて、わたわた焦る。
「お、お前のそれ愛用コートじゃねえか。大丈夫か? 洗ってねえから汗臭いだろ」
「うるさい」
「ねー、渡辺さん、ここの毛布って洗濯してる? 潮臭いんだけど!」
ドタドタと階段を降りてくる音に、少し顔をあげたらフードが頭から落ちる。
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