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第66話

「征孜くん」 「……誰のコート着てるんですか。性欲オバケになりますよ。脱いで、脱いで」 笑顔なのが怖い。 遼が僕の肩にかけてくれたコートを無理に奪おうとして、僕はどうしていいのか分からず固まった。 「お前、医者の端くれならこんな寒い日に薄着で患者を連れまわすな」 「……は? お前、誰に話しかけてんだ」 「もう。征孜くん、やめて。遼、これ返すよ」 潮の香りはしたけれど、微かに遼が愛用している香水も残っていた。 そのコートを羽織って海を見たいとは思えなかった。 代わりに征孜くんは、毛布を二枚僕にかけた。一つは足にひざ掛けのように。もう一つは赤ずきんちゃんみたいに頭からかぶせてきた。 「ちゃんと、風海さん用に洗濯しといてよー、渡辺さん」 「うるせえガキだな。てかお前、遼の元恋人に横恋慕中か」 豪快に笑う渡辺さんと征孜くんは、親子のようなコントのような会話に花を咲かせていた。 「……お前が海に来たいって言ったのか」

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