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第67話

「え、……まあ」 昨日の今日で、こんな風に会話するとは思わなかった。 もう会いたくないなって思ったし、どんな顔をして会えばいいのか分からない。 だから頭からかぶった毛布を両手で抑えて、さらに顔を隠した。 「お前らしくねえな。もう少し準備してから来い」 「君にはもう関係ないと、だけ」 優しくされたくなくて突き放す。 ここで婚約者と婚約破棄するような人ではないし、してほしくない。 昨日まで恋人だと一方的に思っていた人。 じゃあ今は、どうだろう。 君は今は、いやこれからは、どんな立場になるだろう。 「渡辺さんは、下の名前を聞かれると不機嫌になるから」 「そう、なの」 「それで、タトゥーがダセェけど、話題に出すのもダブーだから。面倒臭いことになる」 「……わかった」 「風海さん、行きましょう」 僕と遼が何か会話していると察した征孜くんが、車椅子を掴むと大きく動かして遼から距離を取った。 「征孜」 毛布のお礼をしようと渡辺さんに声をかけようとして先に渡辺さんからこちらに近寄ってきた。 「向こうの離島にイルカ来てんだ。リハビリにいいぞ」

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