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第68話
「へえ、イルカ……っ」
イルカなんて見たのいつぶりだろうか。
水族館とか行ってないよなあ。
「あっちの島に、イルカを触れるテーマパークみたいなの作るって話が出てるんです。でもここ、夏は人が多いし向かないと思うけどなあ」
「ふうん。そうなんだ。そのイルカって、自然に来たんじゃなくて連れてこられたってこと?」
「そう。囲いの中にいるみたい。もう少し回復したら、水上バイクで行ってみましょうか。ライフジャケットつけて」
「……」
なんか声が刺々しい。
きっとさっき僕と遼が話していたからなんだろうけど、僕に当たるのはやめていただきたい。
不可抗力だし。
「……なあ、風海」
「なに?」
イルカのことを考えていたので、まさか遼に話しかけられると思わず声が上擦った。
「その腕、どうしたんだ?」
「お、ギプスじゃん。落書きしていい?」
渡辺さんがカウンターの上からペンを取り出してこっちに向けてくるので、征孜くんがキックした。二人が小競り合いを始めると、仲のいい親子みたいだった。
けど、答えなければいけない。
「うん。ちょっと階段から落ちそうになっちゃって」
「折れたのか? 大丈夫か?」
一歩近づいてきた遼に驚き、腕を隠すように顔をそむける。
なんで放っておいてくれないんだろう。
「大丈夫ではないかな。君の結婚式は無理だと思う」
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