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第71話
結局、海を見に行ったのに心穏やかに海を見ることなんてできなかった。
ただ、僕が海に行きたことを遼は驚いていた。
そんなに僕が海に来るのは変なのかな。
でも変だとすると何が、だ。
いや、それも気になるけど、一番気になるのは――。
「差尻さん、差尻さん」
消灯時間に僕の点滴を確認しに来た差尻さんを捕まえて聞いた。
結局夜ご飯は色々あってあまり食べれなかったので、点滴が再び腕につけられたのは仕方ないとして、僕が言いたいのはそれではない。
「どうしました?」
「彼ですよ。彼。あれって他の患者さんに絶対に迷惑ですっ」
征孜くんが、僕がご飯を食べれないのを差尻さんに報告したせいで点滴なのは仕方ないとしても、点滴を確認したのち、あろうことか、隣のベットの下に用意していたらしい寝袋を取り出して『じゃあ』と去って行くのだ。
どこにいくか尋ねたら、談話室で寝袋で寝るとか。
そんなの、トイレに起きた患者さんが驚くに決まっている。
「でもお、彼、この病院の権力者の弟だしい」
「棒読みな台詞やめてください」
「だったら君がはやく安心させてあげるしかないんじゃないかな」
点滴の向きを確認し、彼女はあっけらかんと言ってのけた。
「貴方が私たちの目を逃れて、また階段とかで勝手にリハビリされるよりは、征孜くんが寝不足で倒れる方がましかもね」
「ましって、そんな」
「大丈夫。征孜くんが睡眠不足になったら医者も看護師もいるから」
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