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第76話
――
僕は同性愛者なので問題ありません。
そういってしまえば、遼に迷惑がかかる。
それに彼女が僕への態度を変えるかもしれない。
だから「そんなことありませんよ」とほほ笑むことぐらいしかできなかった。
その次の日から、点滴は外されたし食事はとり肉の団子とかバナナとかいきなり固形物もでてきた。
流動食は味が無くて、どろりとしていて飲み込むのが大変だったけど、いきなり変わった食事は、スープの味も濃くて驚いた。
でも覗いていた征孜くんが「これが味付けは普通なんですよ」て言ってきたので、単に自分の舌がまだ感覚が戻っていないだけだと知った。
腕の骨折の完治と歩けるようになるのは、ほぼ同時ぐらいかなと言われたけれど、一週間ほど征孜くんとりはびりしたおかげで掴まり立ちとトイレまでは移動できるようになった。
一週間。一週間で、だ。
彼の根気強い指導のおかげだけど、僕の回復力もなかなかのものだ。
「あのう」
「……ん?」
ベットから立ち上がって、窓の外を見ながら感慨深く頷いていた時だ。
振り向いたけれど、声の主はいない。
「あのう」
もう一度声がしたので、目線を下に向けた。
すると小さな男の子が一人。
大きな眼鏡、品のいいブランド服、そして可愛い。男の子なのだけど可愛い。
一瞬、女の子かと思ってしまったけどランドセルが黒いので、男の子だと気づいた。
「あのう、兄がお世話になっております。一文字と申します」
「一文字くん……」
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