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第78話
つまり彼は本当に家に帰らず、談話室で眠っているってこと?
お風呂は当直室のを借りてるのかな。
え?
「えっと、……一文字くんは心配してきてくれたんだね。ありがとう」
「貴方が階段から落ちそうになってからです。ので、その骨折が完治するまで返ってこないのかなって諦め半分なので大丈夫です」
本当に9歳なのにしっかりしてる。
9歳の子にまで半ば飽きられてるって、でも……。
「ずいません、風海さん、こちらに俺の――」
「お兄ちゃん、こんにちは」
「一文字!」
急いで来たであろう征孜くんは、一文字くんをみるなり悲鳴をあげそうなほど驚いている。
まあ気持ちはわからなくもない。
「すいません、一文字がなにか変なことを言っては?」
「ないですよ。兄思いのとても良い弟くんです。可愛いし」
「くそう。俺だって可愛いって言われたことねえのに」
このやろうと、ほっぺをふにふに触りだして、一文字くんに嫌そうに手を振り払われ落ち込んだ様子だ。
「一文字くん、おつかいご苦労様です。果実とお菓子、どっちが好き?」
お見舞いに持って来てもらったお菓子と果物を見せる。
「いえ。報酬が欲しくてしてるわけではないので」
「でも、僕、まだ病院の食事以外食べたらいけないから貰ってくれたらうれしいな」
ね、って頼むと、チョコのお菓子をもらってくれた。
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