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第79話

「あのう、兄なのですが」 そして征孜くんが落ち込んでいるのを見ながら、僕に背伸びしてこっそりこんな言葉を残してくれた。 「あの顔色、ほとんど眠っていないと思います」 「ええ!?」 眠っていない? それって、僕の骨折からだとしたら、一週間? 「チョコ、ありがとうございました。それでは、失礼いたします」 「え、ええ。またね」 何度もお辞儀して去って行く礼儀正しい弟くんを見ながら、呆然としていた。 僕は――。 僕はリハビリで一刻も早く一人で歩けるようになろうって自分のことばかり考えていた。 支えてくれている征孜くんのことをないがしろにしていたんじゃないか。 「征孜くん」 「はい!」 尻尾を振りそうなほど嬉しそうに駆け寄ってくれた彼の、頬に手を伸ばした。 顔色は確かに少し悪い気がする。 金髪で眩しくて、肌をちゃんとみたことはなかったっていうのはもはや言い訳に過ぎない。 「君、眠ってないのか」

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