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第80話
征孜君の顔は笑顔から、驚いて目を丸くした表情へと変わる。
「えーっと?」
「眠れていないのか」
少し熱い頬は、寝不足から来る温かさのように思えた。
「何を言ってるんですか。ばっりばりですよ。俺は三秒あれば眠れる男です」
「じゃあ、今日は僕の隣のベットで眠ってくれるか?」
「風海さんの隣、ですか」
「ああ。三秒で眠れるなら問題ない。それに最初は隣で眠るつもりだったろ?」
「えーっと、そうですけどお。でも襲っちゃうかもだし」
「君は僕の嫌がることはしないだろ?」
じりじりと詰め寄ると、額に汗がにじんでいく。
焦っていくのが手に取るようにわかった。
「あ! 俺の担当の山田さんがこの時間にリハビリお願いしていた気がする! 失礼します」
「征孜くんっ」
風のように走っていく彼を、追うことはできない。
苦し紛れの言い訳だったが、逃げられてしまった。
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