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第86話

頬にキスしたら、僕の濡れていた頬に驚いていたから、僕は濡れてしまった頬をぬぐった。 「僕はもう二度とあんな馬鹿な真似はしません。君に誓います。絶対に君をもう不安にさせません」 「風海さん……」 「だから、安心して寝て?」 もう一度、くしゃっと顔がゆがむので、僕も涙を拭いて微笑む。 「今日は君が寝るまで、僕は寝ません」 「え、ええ、それはちょっと、困るって言うか」 「僕の隣のベットに眠ってください。お願いします」 「ええー。でも襲っちゃうし」 真っ赤になってうつむく彼の顔を覗き込んで微笑む。 「今すぐ、君にここで押し倒されたって叫んでいいです? 二度と僕を見張れなくなりますよ」 「えー……。え、なんで小悪魔? え、まって、可愛い、やべ、語彙力迷子、やっべ」 真っ赤な林檎みたいになった彼と手を繋いだまま立ち上がる。 「ここまで歩くのに疲れたから、腰を支えてください」 「はあ? まじ小悪魔じゃなくて大魔王」 「意味わからないです」 クスクスわらうと、観念したように優しく腰を引き寄せてくれた。 一瞬、唇にキスしたくなって、我慢した僕を誰か褒めてほしい。 そして彼をここまで追い詰めてしまった弱かった僕を、誰か罵倒してほしかった。 「俺が押し倒したら、どうするんですか?」 「君が寝るまで僕が寝ないんですよ。襲えるんですか?」 不思議なので逆に質問すると「まじかよ」ってため息をつかれた。 そうだよ。あきらめなさい。 「絶対に君より先に寝ないから安心して」 「そんな意味じゃねえんですってば」 はーっと溜息を吐く彼の言葉に、首を傾げた。

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