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第90話

「そうなんですね。じゃあ明日はお休みですか」 「いえ。いつものメニューとマッサージは別の方にお願いします。リハビリテーション室に行ったら、伝えた方が来ますんで」 「了解しました」 ハロウィンかあ。楽しそうだなって何となく思っていたのに、征孜くんの顔は面白くなさそうだった。 「……どうしたの?」 「いえ。まだリハビリテーション室まで歩くのは大変だろうから、看護師さんに付き添いで来てくださいって言いたかったんですけど、迷いました」 「なんで? 差尻さんはいないかもだけど、井田さんにお願いしますよ」 「井田さん……どうみても風海さんのことが好きですよね」 「えー!? 君、差尻さんの時も拗ねてたけど、誤解だよ」 「いいえ。風海さんの時だけ、声が高いし笑顔だし、くねくねしてる!」 「していません。彼女は中学の時の同級生です。親しみ込めてくれてるだけですよ」 鋭いというか、なんというか。 彼には隠し事はできない。彼はするくせに。 「でもあんなに可愛い人なら、風海さん、ほだされません?」 枕を抱きしめて、唇を尖らせる彼は、少し可愛い。 今日はお風呂に入ってきたのか、ほかほかした空気を身にまとっているし。 「うん。僕がゲイじゃなかったら、絆されていたかな」

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