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第91話

苦笑すると、尖っていた唇が申し訳なさそうに口角を下げる。 どうしていいのか分からないような、困った様子だ。 「女の子の魅力って、どんな感じ?」 「さあ。俺は気づいたときは貴方が好きだったから。年月で言えば小学生の時からです」 「でも女の子は可愛いでしょ?」 「可愛いけど、目の前の人の方が可愛いし。キスしたいとかエッチしたいとか、匂いを嗅ぎたいとか、ベットに入りたいとかは、風海さんだし」 クスッと笑うと、枕に顔を埋めてしまった。 「じゃあ僕も君も、あんな可愛い女性に恋愛感情を抱けないんですね。ちょっと損した気分」 「べっつに! ラッキーですよ、ラッキー! 浮気されないぜ、やったぜ、って思います」 浮気も何も、僕たちはなにもないでしょうって言おうとしてやめた。 彼が泣きそうな、傷ついた顔をするのが嫌だったからだ。 「ハロウィンが終わったら、12月に教会でクリスマス会があるんですが、行きません?」 「クリスマス会。外出許可でるかな。僕の退院日も決まっていないのに」 「そこは俺が院長の息子の権限でなんとかします。ほら、海の家にいただっさい刺青の渡辺さんが、サンタクロースするんです。あの人、孤児院出身だから、そこで一年間でやった悪事を洗い流すように良いことするんですよ」 「ぷっ。言い方。良いよ」 12月――か。 その月になるころには、遼の結婚式が終わってる。

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