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第92話

二か月後か。 もう少し僕も一人で歩けるようになっているだろうか。 ベットの上での生活、安定しない数値を確認する定期検査。 普通に近づいていくのが確認できるのは、ご飯の堅さぐらい。 まだ一人で病院内を歩くには体力も回復してない。 「あら、でも体重増えてるわよ」 「本当ですか!」 「でも期待しないでね。筋力つくと少し痩せちゃうから。太って痩せて太って痩せてっていいリズムよ」 久しぶりに見た差尻さんの爪が、きれいに磨かれているのに気付く。 「……あの」 「そうそう。井田さんと私の担当、まだしばらく続くわ」 聞く前に、その話を聞かされて驚く。 聞きたくないような、聞かない方がいいような、ずっと逃げていたこと。 「急なんだけど、結婚式を延期するかもしれなくて」 「なんで!」  驚いて大声をあげてしまった。自分でも血が沸騰しているのがわかる。 「……僕のせいですか」 「貴方は関係ないわよ」 クスクス笑われたけど、差尻さんは耳に髪をかけた。 彼女はお団子ヘアで、髪は全く乱れていないのに、髪をかける仕草をしたんだ。 「……なんで、ですか。でも結婚式はするんですよね?」 「うーん。そうね。式はしなくても、入籍だけでもいいけど」 一応、二人はまだ恋人ってことでいいのかな。 差尻さんと遼のことにどこまで首を突っ込んでいいのか、知らないふりをしてもう関係ないと目を閉じた方がいいのだろうか。 「ごめんなさいね。きっとマリッジブルーなんだわ。私たち」

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