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第95話
「遼はおじさんなんだね。僕も遼と同じ年だよ」
「風海さんは、五年寝てたせいか歳を取ってないじゃないですか。残念ながら同い年には見えませんね」
きっぱり断言するかのように言われて、ちょっと困った。
「大人は、お菓子をもらわないんですか」
「うーん。僕は今、あんまり食べられないしねえ。お菓子よりお酒を飲みたいよ」
クスクス笑いつつ、一文字くんが急に真顔になる。
そして僕の小幅に合わせて一緒に歩きだしてきた。
「お酒とか似合わない」
「そう? まあそんなに強くないかな。君は征孜くんたちに合流しないの」
「いえ。入院してない身分でお菓子をもらうのは……。あのお酒は控えた方がいいですよ」
「ふふ。ありがとう」
まだ歩くのもふらふらしている僕を心配してくれている彼は、お世話焼きのお母さんみたいだ。
「リハビリ室まで、一緒に行ってあげます」
「ありがとう。井田さんと一文字くんにお供されて僕は、桃太郎みたいだ」
「王子様みたいですよ!」
いちいち言うことが華やかでとても可愛らしい。
こんな弟なら、何人でも欲しいなって思ってしまった。
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