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第99話

「誰にも言えない関係は苦しいから、聞いてほしかった。あの人は、昔からの知り合いだし、広めたりする人じゃねえし、隠したくなかった」 ふわりと彼の白いコートが風になびく。 外はすっかり冬になっていて、風は肌を刺すように冷たい。 渡り廊下の窓が開いていて、そこから吹き込んでくる風が彼のコートを浚っているようだった。 その窓を閉めると、遼は閉めた僕の手を覆いかぶさるように包んで掴んできた。 「お前が俺との関係を言いたくなるように――、もっと俺に執着しくれるように俺は何度も女を抱いたよ。起きたら名前さえも忘れてしまうような、頭のからっぽの女を抱いた」 「最低だね、君」 「お前は気づいてもじっと耐えていて、ああ、浮気されても耐えれるぐらいには俺のことが好きか。俺が本当に好きなんだなって」 「やめてくれ。もう、やめてくれ」 身をよじって彼から逃げようと走る。 まだ筋力が戻っていない身体は、簡単に彼に後ろから抱きしめられて捕まえられてしまう。 それでも僕は逃げたかった。 「なぜ、婚約を解消したんだ。僕は君なんて二度と好きにならないんだよ」 「それでもお前が征孜のものになるのが、嫌なんだ」

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