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第101話
Side:一条 征孜
一文字が走ってきて、俺の目の前にやってくると息を切らしながら教えてくれた。
『遼おじさんが風海さんを待ち伏せして、言い争いが始まってる』
だから井田さんに車椅子の子を押すのを頼んで、駆け付けた。
駆け付けたのに、まるで悪夢を見ている気分だった。
名前を呼んだのに、風海さんは俺の声に気づかず、あいつに引き寄せられて抱きしめられていた。
その手が、恐る恐る背中に回って――風海さんはあいつの気持ちを受け入れるように抱きしめていた。
悪夢だ。
あいつが何度も何度も浮気をしていたのに、それにひたすら耐えて泣いていたのに。
彼はまた許すというのか。
「風海さんっ」
引き剥がそうと二人の間に割って入るが、風海さんの顔が真っ青で驚いた。
あいつの気持ちを受け入れて喜んでいる表情ではない。
何かに怯えているような、涙目の目で、身体を震わせていた。
「お前、何を言ったんだよ!」
「――真実を告げただけだ。あの事故の日の」
「はあ!?」
お前が言うなと散々頼んだくせに。
風海さんが傷つくから、言わないでくれって。
お前は、風海さんのためだから言うなと俺に頼んだんだろ。
「ああ。お前が怒るのは分かる。俺は、俺のために言った」
「てめえ」
「どうしても、俺も風海を誰にも渡したくないと。駄目なんだ。好きすぎて駄目なんだって」
自分勝手な言い分に、許せなくて怒りで拳が震えた。
「俺は、風海に怒っていないし、責めない。ただ、あれほど追い詰めてしまったことの贖罪をしたい。何もかも投げ捨てて、全部風海に捧げてもいい。本気だ」
それは風海さんに言ってるんじゃない。
俺に言ってる。俺の気持ちを知って、俺を挑発しているのだとわかる。
「俺は本気だ、征孜」
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