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第102話
「だったら、どうして差尻さんと結婚なんてしようとしたんだ! 俺なら彼が起きなくても気持ちは風海さんだけだった。誰に優しくされても、誰に理解されても、風海さんだけだ!」
叫んだのに、少し顔を歪ませただけだった。
そして震えている風海さんの肩を優しく引き寄せていた。
「連絡する。――ちゃんと今度こそ大切にする」
「てめえ」
今まで大切にしていなかったと言っているようなセリフに嫌悪する。
俺が殺すしか、風海さんを解放できないんじゃないか。
それぐらい、風海さんは怯えて怖がっている様子だった。
去って行くあいつの背中を見て、昔のあの時のように目を伏せて涙を流した。
そしてその場に崩れ落ちるように座り込んでしまった。
「風海さん、あいつに何を言われたんだ。なんでそんな辛い顔をするんですか」
「……めん」
「風海さん?」
「ごめん」
苦しそうに絞り出した彼は、まだギプスが取れていなかった腕を、きつく掴んだ。
「思い出したよ。遼は悪くなかった。……悪くなかったんだ」
床に次々と落ちていく涙に、俺はかける言葉が見つからなかった。
代わりに彼は立ち上がって『院長に言いに行かなきゃ』とふらふらと立ち上がろうとした。
「風海さん、どうしたんですか!? 落ち着いてください」
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