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第103話

彼は俺に背を向けると、自分の腕を掴んで震えて泣いていた。 「……僕が」 震える彼の肩を引き寄せ、廊下の隅で俺の背で死角になるように他の人から彼を隠した。 こんなに弱った姿を誰にも見せたくなかったから。 「あの日、遼は別れていいといった。もう別れようと言っていた。僕は別れたくなくて、でももう限界だった。遼の家に残り女性の陰に、辛くて――でも遼以外に好きになる人はいなくて」 「……」 彼はぐしゃぐしゃの顔をあげて、俺を見た。 「僕、水上バイクの上で遼の目を両手で覆ったんだよ」 「……風海さん」 「『このまま一緒に死んで』って。そうすれば遼を自分のものにできるって、俺、彼の視界を奪ったんだ」

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