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第110話

翌朝、いきなり熱は下がった。 まるで、三日我慢したんだから忘れないでいてやろうと僕の心が勝手に納得してくれて、許してくれたような。 許すも何も、これは、僕が引き起こした事件だったのに。 目が覚めて院長が診察に来た時に、遼は悪くなかった。僕が手を離したと伝えた。 「あー、いいの。いいの。遼と話が全く一致しないから」 何度訴えても、事故で記憶が錯乱していると判断され僕の話は全く信用されなかった。 逆に遼の言葉には真実味があったとか、全部辻褄があうから、とまずは健康体になりなさいと、優しい言葉をかけて診察は終わった。 「……起きてたか」 そして目が覚めて一番に会いに来てくれたのは――遼だ。 いつも尻尾を振って現れる大型犬ではなく遼。 僕みたいなやつのことを、一番にいつも考えて行動してくれた彼は、来ない。 「うん。院長に何度も説明したのに全く信じてもらえなかったよ」 「だろうな。あいつは頭が固い上に女帝だから。俺を支配下に置くためには、この事件の加害者は俺じゃなきゃ嫌だろう」 少し離れた椅子に座ると、前髪を掻き上げる。 白いコートは、座ると地面に付きそうなほど長く、そして透き通るように白い。 缶珈琲の蓋を開けながら、遼は溜息を吐く。 「具合は大丈夫か?」 「うん。熱が下がったらお腹が減っちゃっておにぎり食べちゃった」 「すまなかった」

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