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第114話
Side:一条 征孜
三日三晩続いた熱が下がった後、俺は別の方のリハビリトレーニングのメニュー表を考えていた。
そして風海さんもせっかく頑張っていたけどメニューを代えた方がいいか、熱が下がったばかりだから、基礎的なリハビリのみにするか休ませるか考えていた。
リハビリを休む分、翻訳の勉強や試験の方に時間を使えばいいし。
「そこまで酷い傷じゃなかったのに目覚めなかったって、やっぱ精神的なことだったのね」
カルテを見ながら、母は嘆息してそして椅子をくるくる回しながら言う。
「じゃあ後遺症も見られないなら、退院もそう遠くないわね。彼は心が弱っちいのが原因なら支えてくれる人がいればいいのよ」
「……ああ、そうだな。母さんが父さんが死んですぐ再婚したように」
くるくる回っていた椅子が止まり、母が驚いた顔をしていた。
「何? 別にもう子どもじゃないから恨んでねえよ。ただ風海さんは、簡単に心変わりしてくれねえんだよなあ」
はあ、と俺も母と同じような溜息が零れる。
遼が駄目だから、俺。
は絶対にしない。
殺しかけたから恋人に戻る。
それもしたくないような人だろう。
じゃあ俺は格好悪く、まだあの人に縋れるかな。
俺にしてくださいって。
そこまで言って拒絶された場合、俺の心は無事だろうか。
ぼんやりそんなことを思っていたら、リハビリテーションの窓から食堂に入っていく風海さんが見えた。
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