115 / 138
第115話
食堂は、食事制限されていない人ならだれでも入れる。俺たち職場の人たちが利用することの方が多いが、患者とお見舞いに来た人たちの雑談も可能で――。
ということは、食事制限がとれたのかな。熱は大丈夫なのかな。
先日まで何気なく聞けたことなのに、今は話しかけるのも怖い。
それは現実を突きつけられるのが嫌で逃げているんだと思う。
風海さんがあいつとよりを戻すのが怖い。
絶対に俺が入れる隙がないし、俺があいつを非難できる部分がもうなくなってしまう。
風海さんを自殺に追い込むほど酷い仕打ちをしたのは、間違いないのに。
こそこそと食堂に忍び込むと、風海さんは大きな柱の向こう側に隠れてしまった。
あそこは周りと少しスペースが大きくとられているから、耳を澄まさないと話が聞き取れない。
だけど入り口から見えないから、一人で入るにはいい場所かもしれない。
「すみません、差尻さんお時間を頂きまして」
だけど、風海さんは一人じゃない。
どうやら差尻さんと待ち合わせしていたらしい。
「ううん。どうしたの? 私に遼について相談って」
ともだちにシェアしよう!