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第117話

不器用な人だ。何も風海さんは悪くないのに、告げた人を憎んでしまうかもしれないのに、だ。 もし差尻さんが風海さんを傷つける言動をしたら飛び出そうと決めた。 風海さんの言葉で彼女が傷ついてもだ。 「風海さん、私ね」 ぽつりと落とすように、彼女が言う。 いつもの仕事中のような、柔らかい声。 「私もね。本音を言うと、貴方が眠っていた五年間、荒れて手が付けられなかった遼を知ってるから、貴方の存在が面白くなかったのよ。この人が、遼を苦しめてるのねって」 「申し訳ありません」 「就職先も、親の監視先でしょ。でも遼は海が好きで、休みの日なんてほとんど海行ってるし。私のことより海よね、この人って笑えるようになったのも最近だったけどさ」 「はい」 「貴方の呼吸器を止めたら、遼は解放されるのかなって思ったことがあるってことは言っておくね。貴方だけ言わせるのは申し訳ないし」 なぜ差尻さんは笑っていた。怒るでも殴るでもなく、風海さんの話を聞いて自分の汚い部分を吐露している。 「だから、なんか納得しちゃった。ああ、なるほどねって。だから遼は貴方に執着してるのね。親友だからじゃなくて、恋愛か。そっか」 ふふふと笑った後、彼女は急に黙り込んだ。 「僕の事故は、遼は悪くないんです。訴えても、遼も院長も信用してくれなくて。でも遼の大切な存在である貴方に知ってほしかった。遼は悪くなかったんです。僕のせいでただ苦しめていただけです」 「そう」

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