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第119話

大切な、人。 誰よりも幸せを願っている人。 風海さんの青春時代、全ての時間を一緒に居た人。 こんなにも風海さんの感情を揺さぶる人だ。 「僕は、遼とちゃんとお別れします。ちゃんと話し合う。何度も話し合う。それだけ僕は遼に許されないことをした。嫌いになってくれた方がどんなに良かったか」 「……私はどうしたら貴方は嬉しいの?」 「待っててあげてほしい。貴方が遼の帰る場所であってほしい。遼を許して、罵るのは僕だけにしてほしい。絶対に遼は貴方の元に帰るから」 「どうかしらね。こんなに健気で一途でいじらしい風海さんを、あの人が放っておくのかしら。全然、想像できないし、そんなことする遼は嫌いよ」 困ったわね、とため息をこぼす。 「もう少し貴方が嫌な人だったら良かったのに、駄目ね。リハビリ頑張ってる姿や、遼と気まずそうにしてる姿や――征孜くんの優しさを受け止めきれない不器用な姿見てるせいか、どうしても貴方を嫌うことはできない」 思い出したかのようにテーブルの上に置いてあったコップを、一気飲みして豪快に口を手の甲で拭く。手の甲に真っ赤なルージュが落書きのようについていた。 「貴方ならいいわ。でも遼は自分で取り返す。それなら、いいでしょ。貴方がきにすることもない」

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