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第120話
「はい。もちろんです」
神妙に頷く健気な風海さんに、気づけば俺は二人の前に飛び込んでいた。
「そこに、最後に俺が風海さんをもらいます!」
「征孜くん……」
「二人の話を盗み聞きしたことは謝らないけど、俺は何があっても風海さんに一人で背負わせるつもりはないし。まあ俺と恋人になれば、悲しみは半分、喜びは二倍みたいな。今なら特典に毎日俺と添い寝できる権利とかあげちゃうし?」
自分でも途中から何を言ってるかわからなかってけど、立ち上がった差尻さんに思い切り脛を蹴られた。
「風海さんの決意を台無しにしないでよね。風海さん馬鹿の征孜くん」
頭の上に、飲み終わった珈琲の紙コップを置かれてしまった。
そのまま差尻さんは何も言わず去って行く。最後まで良い女すぎて、逆に困惑する。
もっと頭の悪い、おっぱいがでかいだけの女だったら良かったのにな。
「ぽ、ポイントカードとかどうっすか。俺が諦めなきゃ毎日、風海さんが俺の頬にキスいSてくれて――」
ポイントが満タンになったら俺を引き取るしかないんですよって。
俺が言うと、真っ赤なウサギみたいな目で『ありがとう』と笑う。
君にはいつも救われてるよと、やんわりと断られた。
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