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第124話

「ないけど」 「骨と皮だけだったら、抱き心地もよくねえしさっさと太れよ」 頭をガシガシ触られ、むっと唇を尖らせる。 まるで恋人みたい。恋人気取り。 「脂肪をつけるだけじゃ駄目だよ。ちゃんと筋肉をつけて太っていかなきゃいけないんだ。甘やかさないで」 「甘やかしたつもりはないけど、お前が今、何をほしいかわからなくて」 頭を掻きながら、冷たくてプラスチックのスプーンが刺さらないアイスを見ている。 遼の優しさが伝わってきて、いたたまれなくなる。 遼は無理心中しようとしたあほな恋人を許そうとしている。 許して、目が覚めない間に他に恋人を作っておきながら、僕が征孜くんとキスして覚醒して、真実を突き出して離れるな、という。 そんな彼の優しさは、全て受け止めてくれる彼女という存在がいるからできること。 だから遼の優しさや愛情は、今は苦しいだけだった。 大人びた顔つき。大学生の時の方が、もっとヤンチャでもっと豪快に笑って、そして振り回していた。 今、ようやく目を見て話せるようになって気づくけど、落ち着いた色になった髪、優しく微笑む大人っぽい表情、少し無口になった。 僕のせいで苦労しただろうに、彼は僕を見て顔を綻ばせる。 「……このケーキはもらうけど、甘やかしはこれが最後だから」 プラスチックのスプーンを手に取り可愛いサンタを見つめる。目のチョコを掬って口に運ぶ。 遼は嬉しそうに「目から食べるのかよ。グロいな」とケタケタ笑う。 その姿は、大学生の時の遼と重なった。

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