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第130話
昔から自分の考えや意見を口に出して言うのは億劫だった。
しゃべると、僕はほかの人とのずれを突きつけられる。
話すなら、何人か意見を聞いた後多い方の意見に寄せて話す。
そうしないと、僕の意見は異常だと気づかされてしまうんだ。
「風海くん、その……ずっと好きでした」
女の子に初めて告白されたのは中一の四月。
真っ赤になって告白してくる彼女に『部活が忙しいから』と嘘を吐いた。
必死で告白してきた彼女に、何も感情が浮かばなかったからだ。
「また告白、断ったのか」
「遼。見てたのかよ」
「俺は体育館の当番で、ドアを開けに来ただけだ」
「……そう」
同じバスケ部で、補欠とレギュラーを行き来する僕と、キャプテンの遼では格が違いすぎる。
それでも普段通りに接してくれる遼が好きだった。
そう。――好きだったんだ。
僕は、遼みたいに引き締まった身体、低い声、大きな手に体が反応すると気づいた。
女性の柔らかい体じゃない。男性が。
『レッド! レッドが一番かっこいい!』
小学生の時に、好きな人の話になってぼくだけ同性を好きだと発言したときに気づいた。
『まだ特撮なんて見てるのかよ』
皆は、そっちのほうをからかった。
だから、僕が同性を好きな人間とは気づかなかった。
だから、これ以上疑われないように。
周りの意見に合わせて、目立たないようにしたい。
きっと僕は普通じゃない、から。
昔の記憶が、ぶくぶくと海の泡と共に浮き上がってくる気分だった。
「気分でも悪いのか、風海」
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