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第131話

「え」 顔をあげると、僕のために大きなコートを持って立っている遼だった。 「僕、上着持って来てるけど」 「これ、お前用」 渡された黒い大きなコートは、足首まで隠してしまってまるで僕はペンギンみたいだった。 「前に海で見た時、車椅子だったから――もう歩けないと思ってた」 「征孜くんのおかげだよ」 僕のことを、寝ないで毎日心配してみててくれていたんだからね。 「あっそ。こっち。ちょっと揺れるから腕、掴むぞ」 「え、あの」 船で渡った島。船から陸までに木でできた道を渡るのだけど、ところどころ腐っているし波で揺れている。 「大丈夫か?」 「うん」 「抱っこするか?」 「大丈夫だってば」  柔らかい床ならば、病院の庭園の床で慣れている。  それよりも引っ張られてる腕の方が、恥ずかしいから辞めてほしいよ。 「お、来たか。遼」 「渡辺さん」 上陸すると、山から下りてきたトラックから渡辺さんが手を振ってくる。 無人島で、一周車で15分程度の大きさ。 手入れされていない山の周りを、獣道よりましな程度の砂利道がある程度。 渡辺さんは、自分で切りながら山に道を作っているらしい。 「なんだ、こいつ連れてきて大丈夫なんか」

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