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第133話

式場のキャンセル料をもう払ってしまっているとう事実に胸が痛んだ。 あんなに良いひとを――。 「お前さんのその顔からして、よりを戻すつもりはねえのに遼が暴走してるって感じだな」 「いえ。遼は悪くないんです。……何も悪くなかったんです。でも恋人にはもどりません。すいません」  はっきりと意思表示をしなければ、遼だけじゃなく征孜くんさえも傷つけてしまう。  僕ができることは遼の潔白を示すことだけだ。 「僕が遼を事故と見せかけて心中しようとしたんです! 遼は僕だけでもって助けてくれたんです。彼は悪くありません」  横を向いて、つばを飛ばしながら叫ぶと、渡辺さんはちらりと僕を見た後眉をぴくぴく小刻みに動かした。怒っているようにも呆れているようにも見える。 「でもよお、あれだろ。あいつがお前と付き合ってるのに、女ばっか抱くからだろ?」 「それでも許されることではない、です」 「お前さんは、誰に許されてぇんだ? どうしたら遼の気持ちや征孜の気持ちに向き合えるんだ」 「誰にって」 「お前らの恋愛感情は、誰に許されるもんでもなくてお前らのもの。遼にはその覚悟があったがお前にはなかった。だから試すようなことして傷つけて。お前さんは例え征孜や遼と付き合えたとして、隠れるつもりなんだったら確かに選ばない方がいい」 絶対にお前らは傷つくだけで終わる、と渡辺さんはきっぱりと言った。

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