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第135話
山を下り、小さなコンクリートの建物前でトラックは止まった。
中に入ると、セキュリティカードを使って中に入り、モニターに番号を入力して、イルカの温度や水温管理をしているモニタールームに入っていく。
これって、渡辺さんと遼に何かあった場合、モニタールームに入れる人いないんじゃないかなってちょっとだけ不安になった。
僕の表情に気づいたのか、豪快に髪をくしゃくしゃとされた。
「まあそうだな。イルカの数を増やすにしても設備が足りねえ」
「お二人で、されるんですか?」
「水族館と提携してるから、向こうから何人か来るよ。だが遼は住み込んでここで働くつもりらしい」
「そうなんですね」
壁一面に埋め込まれたいくつものモニターは、少しだけSFチックで、童心に返ったように心を奪われた。
そこで遼が笑顔でイルカにご飯をあげながら触れ合っているのを持て、とても切なくなった。
急に胸を鷲掴みされ、凌駕されるような、痛み。
それは遼が心の底から笑っているのを確認できたからだ。
僕が目覚めた瞬間、遼は泣き出しそうな切ない顔だった。
お見舞いに来ても、すでに式が決まっていた遼は、どこか辛そうだった。
僕といても、もうあの笑顔は見られないんじゃないかな。
「渡辺さんは、良い人だから言いますけど」
「お、おれがいいじゃつってわかってんのか」
「はい。とても」
誰が見ても、渡辺さんには懐いてしまうんじゃないかな。
「で? なに? もしかして既に征孜と寝てたりすんの? 男同士ってどうなの、それ」
「……そんな話じゃなくて」
でも泣きそうだったので、ふざけてもらった方が安心する。
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