136 / 138
第136話
「僕は、遼や征孜くんの前から消えるべきだって思いました。退院したら、僕は自力でどこか遠くで、一人で頑張らないとなって思うんです」
「……ほお」
「一緒に居ても別れても辛い相手です。でも、僕は遼にはこの先ずっと感謝してます。大切な思いを沢山くれた相手だから」
きちんと僕たち二人の未来はないと話してからさよならしようと、決めた。
この5年間で君を傷つけてきた僕に、何ができるかと言えばそれぐらいじゃないかな。
「お前さんよお」
「はい」
「決断は潔いが、誰一人幸せにならんけど、いいんか」
「二人は、きっと僕がいない方が幸せになれます」
「ふうん?」
納得できなさそうな渡辺さんは、モニターのスイッチを弄りだした。
イルカの声、超音波をキャッチするモニター画面に切り替えて、そして椅子に座ってボタンの周りを爪でカッガッと叩きだす。
「うーん」
「渡辺さん?」
「いやあな。お前、マイナス思考で俺とは全く価値観も物の見方も違うからよお。どうすっべかなあって」
「僕のことまで心配してくれてるんですか」
「だってお前さん、子どもの征孜を海で助けて一回、記憶が混濁してるし。言葉に気を付けないといけねえみたいだしなあ」
ともだちにシェアしよう!