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第137話
渡辺さんは頭を掻いた後、申し訳なさそうに僕を見る。
「男が恋愛対象って必死で隠そうとしてるけど、遼も征孜も隠す気はねえだろ。お前さんはただ、自分から逃げたいだけに見えるんだよ。ちゃんと自分と向き合ってから遼と話してやんな」
「だって実際、気持ち悪くないですか?」
男の自分が、遼の浮気にいちいち泣いたり傷ついたり、心中しようとしたり。
「ぜーんぜん。誰を好きになろうが、迷惑かけるわけないだろ」
ぐしゃぐしゃと頭を両手で掻きまわされ、すごい力に思わずよろけた。
『おい、さっさと水温と水質の報告しろよ!』
モニターの向こうで、バケツを持った遼がバケツを振り回しながら怒鳴っている。
「あー、問題ねえよ。向こうのステラちゃんも順調そうだよ」
『そうか。トラックに俺のコートあるだろう。風海にかけてこっち送ってくれ』
遼が手招きした。
画面越しに僕に微笑みかけてくれるのとみると、胸が苦しくなった。
遼も征孜くんも渡辺さんも僕を受け入れてくれている。
受け入れてくれている人たちの中は確かに心地がいいものなのかもしれない。
「あんな顔した遼を、あんたはフるんか?」
「別れてる、んで。ふるんじゃないです」
「お前さんみたいに弱い奴は恋人が二人いてもいいんじゃねえか。遼だって何人もいたんだからよ」
「やめてください」
モニター室から出て、白くて重たいコートを着せられ、渡辺さんは豪快に笑った。
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